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戦国時代・上杉家の執政・直江兼続の偉業を紹介する専門サイトです。主に米沢での偉業を中心にご紹介します。

出羽亀岡文殊堂に奉納された直江兼続の漢詩「暁鐘」は、眠れぬままに朝方の鐘を聞いた情景を詠んだものです。

直江兼続の作品7首「暁鐘」

暁鐘・現存するもの
暁鐘
ぎょうしょう
暁鐘
支枕幽斎夢不成
まくらをささえ ゆうさいに  ゆめならず
枕を支え 幽斎に 夢成らず
疏鐘報暁太多情
そしょう あかつきをほうじて はなはだたじょうなり
疏鐘 暁を報じて 太だ多情なり
豊山霜白一声裏
ほうざんに  しもしろし  いっせいのうち
豊山に 霜白し 一声の裏
月落烏啼三五更
つきおち   からすないて  さんごこう
月落ち 烏啼いて 三五更
 静かな部屋で、枕を支えてはいるけれど、なかなか寝付けない。
 ゆっくりと間をおいて聞こえてくる鐘の音は、すでに暁を知らせているが、昔のことを憶いだしては、感情はますます昂ぶるばかりだ。
 今夜のこの寒さでは、豊山には白い霜が降りているのであろうか、時あたかも烏の一声が鋭く響いた。
 もうすでに、月は沈み、烏も啼いて刻は午前0時から4時ごろだろうか。

 この詩は唐の有名な詩人張継の「楓橋夜泊」を下敷きにしているといわれ、旅先での眠れぬ一夜の趣向とも詠めるが、ただ単に眠れぬ、ではあまりにも単調すぎる。
 「はなはだ多情なり」ということを強調しているようにもとれるので、かって情を交わした人と訪ねた憶い出の地を、いまは独りで再び宿をとって、昔を憶い出して暁までも眠れないでいるとも解釈できる。
※解釈文・「花に背いて帰る」(野村研三著 米沢御堀端史蹟保存会発行)より転用させていただきました。
※参考資料・「直江兼続伝」(渡部恵吉・小野栄・遠藤綺一郎共著 酸漿出版発行)